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2005年1月11日火曜日

G 旅行案内 / Tourist guide


企画番号G「旅行案内」

企画責任者:三村一貴(東京大学文学部中国語中国文学専修過程)

 場所を紹介する文章を書いて貰う。場所は自由に選んでよく、観光地に限らず、全然知られていない場所や、或は部屋でも、店でも、車内でも、とにかく空間を紹介した文章を募る。
 何かについてその魅力をアピールし、そこに行ってみたいと読者に思わせるような、心のこもった文章を期待する。人の心を浮き立たせるような文章を書く練習である。
 
 分量:1人2ページ、1500字程度。
 人数:3~8名
 文章:横書きとする。視覚的な工夫を最低一つ盛り込むことを条件とする。例えば写真、イラスト(場所そのものを描いたものに限らない)、フォントの大小、文章の枠取りなど。

文章の例①
【熱海温泉・萬屋旅館】
下の写真を参照。



文章の例②
【道後温泉】(原文は旧字旧仮名)

     光輝ある歴史を誇る道後温泉
 神さぶる伊予の湯桁のそのかみをおもへば遠き行幸なりけり(万葉集)………三千年の遠き神代ながらの霊泉として天下に普く喧伝せられ幾多の名勝旧蹟に富む風光明媚の遊覧地を兼ねる道後温泉場は人皇第七代孝霊天皇以降実に七帝四后が行幸あらせられ、近くは大正天皇と畏くも 今上陛下を迎え奉れる輝く記録を有している。又有栖川大宮、閑院、小松、伏見、久邇の各宮殿下より御来浴の栄を辱うし、伊藤、松方、土方、芳川の諸元勲。後藤新平、加藤高明、濱口雄幸の諸名士に子規、漱石の二文豪。犬養、尾崎、若槻、安達の諸氏皆亦好んで来浴している。こうして日本全国各地より来遊する入浴湯治の客は実に一年百数十万の大数に及び温泉街は四時之れ等の浴客に依て殷賑を極めている。その夜となく昼となく滾々として湧き出る温泉の透明なる姿は之を美玉にもたとうべく温度は誠に人の温浴に適合し泉質は亦貴重なるラドン(ダヂウムヱマナチヨン)を多量に含有するアルカリ性の純良鉱泉であってその強烈なる放射作用は医治の効無きあらゆる難病をも全治し就中胃腸病、痔疾、喘息、筋肉麻痺、神経痛、ヒステリー、神経衰弱、動脈硬化、糖尿病、痛風、リウマチス、貧血症、腎臓炎、遺尿、遺精、子宮病、産後衰弱、陰萎、睾丸炎等に特別の効験あるは近代科学の立証する処である。而して古き歴史と貴き霊泉を表象する壮麗豪華なる浴場の古典的な建築美は正に一大偉観たるを失わない。実に道後温泉が天下の霊泉と称揚せらるる亦故無きにあらずと謂うべきである。
     交通至便なる道後温泉
 近代文化の長足なる進歩は海陸交通機関の発達を促して僅少時間に且つ最も安易に遊覧旅行の目的を達成し得るに至った。今試みに京阪神地方を起点とせば先ず高松市に第一歩を踏み入れ日本三公園の一たる栗林公園に杖を曳き更に転じて屋島古戦場、琴平神社、善通寺等を巡遊して鉄路僅かに五時間、翠緑滴たらんとする松山の古城を望見し湯の匂り高き道後温泉場に旅装を解くのである。そうして心ゆくばかり霊泉に入浴湯治して近郊の勝景を探り遺蹟を訪ね暫く逗留して更に厳島に或は別府に転行するも面白く今亦之が逆コースをとって廻遊するも愉快であろう。かくて東よりするも将西よりするも羅布する島影を縫う大型快速船の甲板に立って眺むる瀬戸内海の絶景は克く筆舌の尽し得る処ではない。更にスピード時代の要望に応じ道後温泉と東京、大阪、高松、福岡、京城の間を旅客飛行機が定期航空している。而して海に陸に空に四通八達の交通至便なる道後温泉に都塵を遁がれて遊浴を試みるならば温泉地気分を満喫し得らるる総ての娯楽機関も完備し徹底的な満足に深い印象を刻みつけらるるであろう。
     専ら奉仕に努むる道後の旅館
 玲瓏璧の如く浄き道後の霊泉は永劫に易わることなく此の姿で無限に湧き出ることであろうが遠近の遊浴客を迎うる旅館に於ては建築、設備、調度、食膳、待遇之れ等総てを文化に伴う近代色に改善し旅館組合(道後貴賓会)は別に倶楽部を構えて撞球、囲碁を設備し又団体の送迎、宿泊の斡旋、入浴遊覧の案内、紹介応答に任ずるなど遺憾無きを期している。殊に地方には新鮮美味の蔬菜と果物が豊富なるに加えて溌溂たる瀬戸内海の鮮魚を巧みなる調理に依って食膳を飾っている。而して単独にも家庭同伴にも或は団体にも共に広き居心地良き和洋客室の用意があり宿泊料は二円(一泊二飯)内外を普通とし長期の滞在又は団体に対して特に割引の便法を講じ低廉を旨としている。之れに選抜の女中が恰も家人の如く近侍奉仕して歓待に努むる温泉地特有の掬すべき風情には亦格別の趣きがある。斯うして道後温泉が避暑、避寒に好適処であるは言うまでもなく公用の旅、商用の旅、見学の旅、新婚の旅、慰労の旅或は漫遊に探勝に巡拝に登山にキャンプに採蒐にあらゆる旅次に一浴を試みるには温泉と其の環境が寔に興味津々の特異な別天地である。
   温泉の街に紅梅早き宿屋哉         子規
   草花や露あたたかに温泉の流れ       同       (下略、1626字)

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執筆にあたっての注意事項については企画概要をご覧ください。
 本企画は、第6号出版後、新論説集「マージナリア」公式ウェブサイトに全文が転載されます。
 執筆希望者は1月31日(日)までに、参加の旨を編集部にまでお伝えください。
 提出期限は2月14日(日)です。

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G "Tourist guide"

Project leader:Kazuki Mimura (The University of Tokyo)

only in Japanese





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